検証 ボードゲーム「マンカラ」が脳に与える影響

検証 ボードゲーム「マンカラ」が脳に与える影響

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    アフリカや中近東、東南アジアにかけて古くから遊ばれている伝統的なゲームです。名前の由来はアラビア語の[naqala(動く)]から来ています。遊び方は、全世界でなんと百種類以上! 子どもから大人まで楽しめる、簡単だけど奥が深いゲームです。日本でも多くの児童館、介護予防現場などで楽しまれています。

    手前の6つのポケット(穴)が自分の陣地、向かいの6つのポケットが相手の陣地。まずは各ポケットに4個ずつ石を置きます。自分の陣地の好きなポケットから石を全て取り出し、右回りに石を1個ずつ置いていきます。順番にそれを繰り返し、どちらかの陣地のポケットから石がなくなり次第ゲーム終了。勝敗のつけ方は、それぞれのルールによって変わります。実験では、もっとも基本的な3つのルールで行いました。

    ベーシック

    先に自分の陣地の石をなくしたほうが勝ちになります。

    イージー

    自陣のゴールに入っている石が多いほうが勝ちになります。

    カラハ

    自陣のゴールに入っている石の数と、自陣のポケットに石が残っていればその数との合計で、多いほうが勝ちになります。

    詳しい情報はこちら
    http://jiten.recreation.jp/asobi/P-0081.php

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    1戦目(ベーシック)では、初心者の左前頭葉が青くなっています。これは安静時(「安静時の様子」参照)よりも脳の活動が落ちていることをあらわしています。おそらく、ルールを説明されても理解しきれなかったのでしょう。分からないから、考えるのを放棄したような状態です。

    ただ2戦目(イージー)以降はマンカラが持つ独特のルールを自分で掴んだことにより、前頭葉がきちんと活性化して赤くなっています。いっぽうで経験者は、始めから脳が活性化しているようです。

    2人とも、脳活動で一番重要な「ワーキングメモリー」(*)と呼ばれる部分がしっかりと活性化していますが、初心者と経験者を比べると、初心者は広範囲で脳が活性化しているのが分かります。逆に経験者は、活性化の範囲がだんだん小さくなっています。つまり経験者は必要な部位のみ活性化させ、効率的な脳の使い方をしているわけです。

    *)ものを考えたり、判断したり、実行するときには、前頭葉(外側部)で過去の記憶や今の情報を組み合わせるなど高度な情報処理が行われ、一時的な記憶が生まれます。私たちはこの記憶を元に、考えや判断に対して何らかの結果を出しているのです。この一時的な短期記憶を「ワーキングメモリー」(作業記憶)といいます。
    たとえば会話中は相手の言葉を理解するために、買い物中であれば暗算で金額を計算するために必要な情報を、脳にちょっとメモしては作業し、またメモしては作業しを繰り返しています。結果を出した時点で必要の無い記憶は消え、また新しく必要なワーキングメモリーが更新されます。

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    まず、2人とも「ワーキングメモリー」がしっかりと活性化しているのが分かります。初心者の方は、子どもと同じで広範囲で脳が活性化していますね。

    いっぽうで経験者の方は、1戦目からすでに必要な部位のみ活性化していて、効率的な脳の使われ方をしています。おそらく将棋や囲碁のように、「この位置のポケットには、この個数の石があると良い」というような、マンカラの定石をご存知なんだと思います。

  • 初心者は広範囲に、経験者は効率良く脳を使っている点は、大人も子ども一緒です。大きな違いは、子どもは右前頭葉の活動が目立ちますが、大人は子どもほど活動していません。これで分かるのは、大人は左前頭葉を使った言語的な理解を、子どもは右前頭葉を使った画像的・直感的な理解をしているということです。

    「言語的理解」とは、物事を覚えるときに言葉で言えるような記憶の仕方、「画像的理解」は、言葉でなく映像で捉える記憶の仕方のことをいいます。実際、大人の初心者の方は1戦目から、左前頭葉のワーキングメモリーに関わる部分がしっかり使われているのが分かります。

    これは、言葉によるルールの説明を理解することができたからでしょう。逆に子どもは理解出来なかったため、左前頭葉の活動が低下し、右前頭葉が活動しています。このように子どものうちは、画像的なワーキングメモリーを使う傾向にあるので、指導する際は言葉で説明するよりも、実際にやりながら教えるほうが効果的です。

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    マンカラはルールが単純なので、初めてやる人でも頭の中でルールを言葉として回しやすいし、直感で理解することもできるゲームです。

    これは大切なことで、ルールが簡単だと、しっかり頭を使う段階にすぐに入ることができます。基本のルールが分かれば、「ここをこうやって、次をこうやって」と自分で試行錯誤しながらプラスアルファのことを考えることができるので、脳が活性化します。これが複雑なルールだと、覚えるのが大変で嫌になり、脳の活動が下がってしまいます。つまりマンカラは、遊びの中で楽しみながら、頭の使い方(ワーキングメモリー)を鍛えられるゲームと言えます。

     ですから、子どもの発育発達や高齢者の認知症の予防にとても効果的です。ワーキングメモリーは8歳から12歳くらいに完成期が来るので(グラフ参照)、幼児期や小学校低学年ぐらいの子どもたちにマンカラで遊ばせることで、頭の使い方を覚えるとともに、ひいては勉強にも生きてきます。

     一方で、ワーキングメモリーは歳をとると活動が低下していきます。ワーキングメモリーの力が衰えると、物忘れや物覚えが悪くなるということが起きてくるのです。活動の低下を防ぐためには、ワーキングメモリーを日頃からしっかり使うことが大切ですので、ルールが単純で高齢者でも楽しめるマンカラはもってこいだと思います。

     またテレビゲームと違って、対戦相手の気持ちを考えたり、相手の裏を読んだりすることが必要になります。こうした行動も、脳の活性化につながりますし、子どもから高齢者まで楽しめるということは、世代間のコミュニケーションの促進にもなります。

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