スポレク指導者の資質が事業の成否を決める

公益財団法人 日本レクリエーション協会

理事長 小西 亘

スポレク指導者の特質

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 スポーツ・レクリエーション事業(スポレク事業)は、レクリエーション事業の一分野です。「人の心を元気にする」というレクリエーション事業の手段として、スポーツの「楽しい」という側面を利用するものです。その事業の担い手となるスポレク指導者に求められる資質は、レクリエーションの一般的な知識・技術に加えて、スポーツを楽しむための知識・技術が求められます。また、スポレク事業で求められるスポーツは、だれでも、どこでも気楽にできるものを優先します。

 スポーツを楽しむために必要な専門的な知識としては、取り上げるスポーツの簡単なルールと体と心に及ぼすスポーツの効用などです。特に、従来スポーツに距離を置いていた年配者をスポーツに誘うためには科学的論理が欠かせないと思います。

 生涯スポーツの指導者は、スポーツ向上志向の強い希望者を対象にするのが原則ですが、スポレク指導者は違います。従来スポーツに距離を置いていた人々を掘り起こし、スポーツを楽しむ場に誘うという使命があります。スポーツ基本法の前文にあるように、「スポーツを通じて幸福で豊かな生活を営むことは、全ての人々の権利である」という精神を具現するという役割を担っているからです。

 通常、スポーツ指導者を含む教育者は上から目線で、一律に、プログラムに従い一定の水準まで引き上げるという手法をとっています。これに対し、レクリエーション指導者は、同じ目線で対応し、対象者の関心事や今までの経験を個別に引き出し、同じ考えを共有して仲間になる。あくまでも個人的な信頼関係が基本になっています。指導者というよりも「支援者」です。スポレク指導者にもこのことが強く求められています。今はやりの言葉「お・も・て・な・し」の心に相通じるものがあるように思います。

スポレク指導者への期待

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 2020年の東京オリンピックは「成熟社会のオリンピック」になるそうです。すべての国民が等しくスポーツを楽しむ環境が整備される、ということなのでしょう。県や市町村が設置する競技場は、一部の愛好者に独占されるものだけではなく、全ての国民が利用できるという視点を大事にしてほしいと思います。

 私たちが構想するスポレク事業では、多額の建設・運営費用を必要とする特別な施設は求めない。小学校の体育館、公民館、公園など、現存する施設を利用することにしています。したがって、どこでも開催でき、だれでも参加できるスポーツを優先的に活用したいと思っています。

 すべての住民を対象とするスポレク事業では、多額の費用を必要とするものはなじまない。住民にとっては原則無料にしないと普及しない。そのためには、市町村教育委員会が主催し、市町村レクリエーション協会が主管し、スポレク指導者が担当する、という構想をもっています。スポレク事業の成否はスポレク指導者の資質にかかっています。私たちの課題は、いかにして優秀な指導者を養成するかです。

 現在、私たちが持っている新しいスポレク事業の構想は、できれば27年度から、文部科学省の委託事業として始めたいと考えています。そのためには、この事業に対応する指導者を26年度中に準備しなくてはならない。暫定的に、現存のレクリエーション・コーディネーターやベテランのレクリエーション・インストラクターの中から選考し、ブロック別に研修会を開催して間に合わせたい、と思っています。

 これはあくまで暫定的な措置ですが、新しい養成計画が軌道に乗るまで数年間は続ける必要があります。新しい養成計画は、これとは別に27年度から始めることになります。養成プログラムの内容はスポーツ関連のものが多くなると思われるので、現実的には体育系の大学などが中心になると思います。

 このスポレク指導者の資格は、従来の指導者とは別のものになりますが、レクリエーション・インストラクターなど現在の指導者が新しい資格を容易に取得できる方途を講じる必要があります。これは大切な課題であると考えています。

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