公益財団法人 日本レクリエーション協会は、だれもが楽しくできて、しかも高齢者の健康増進に効果のあるパッケージプログラムを開発しました。「スポーツ・レクリエーションプログラム(略称・スポレクプログラム)」です。

スポーツ庁の「平成29年度スポーツ医・科学等を活用した健康増進プロジェクト(スポーツ・レクリエーション活動を通じた健康寿命延伸事業)」でその効果を確認しています。

体力に関する効果

総合的な体力がアップ! バランス力、持久力、敏捷性も向上

体力は、レク式体力チェック6種目に、椅子から立ち上がり、3m先の目印を折り返して再び座る時間を測り、移動能力を見る「タイムアップアンドゴー」、椅子に座り、前にひかれた30㎝幅のラインの内側と外側を20秒間、両足でできるだけ素早く踏み、回数を計測する「ステッピング20」、3分間できるだけ早く10mの往復を繰り返して歩き、その距離を測り、持久力を評価する「シャトルスタミナウォーク」を加え、9種目で測定しています。

図:2ステップの変化
図:ファンクショナルリーチの変化

その結果、体力については、「実施グループ」は総合的な体力を測る種目である「2ステップ」が1.44から1.46へと向上しました。プログラムを実施しなかった「測定グループ」は1.41から1.39へと下がっており、明らかに効果があったことを示しています(統計学的にも有意)。バランス力を測るファンクショナルリーチ、敏捷性を測るステッピング20、持久力を測るシャトルスタミナウォーク、9種目の合計である総合点も増加傾向となっており、「楽しくてためになる」を実証しています。

図:ステップ20の変化
図:シャトルスタミナウォークの変化
図:総合点の変化

心理的な効果

「活力」が明らかに向上! 「日常役割機能(身体)」、「心の健康」も増加

心理的な効果は、「健康関連QOL」、「抑うつ」、「主観的幸福感」、「生活満足度」などについて、プログラム実施前、実施後にアンケート調査を実施し、その変化を調べました。その結果、「活力はあるか」との項目では、実施前63.0点だったものが、実施後は68.0点と5ポイント増大しました(統計学的にも有意)。これは、「過去1カ月間に、あなたは活力にあふれてましたか? 一番よくあてはまなるものに〇をつけてください。1.いつも、2.ほとんどいつも、3.ときどき、4.まれに、5.ぜんぜんない」との質問に関する回答を0 ~ 100点の得点に換算し、平均値を出したものです。ほかにも、「過去1カ月間に、あなたは仕事やふだんの活動(家事など)をどの程度できたか」などを聞いた「日常役割機能(身体)」が78.4点から81.8点、「心はおちついて、おだやかだったか」などを聞いた「心の健康」も68.2点から71.6点と3点以上の改善が示されました。

図:「活力」の変化
図:「日常役割機能(身体)」の変化
図:心の健康

測定項目

健康関連QOL」:健康状態や階段が登れるか、仕事や家事などはできるか、体の痛みや心はおだやかか、活力はあるかなどを聞くもの。

抑うつ」:毎日の生活に満足してるか、漠然とした不安があるか、無力だと思うかなどを聞くもの。

主観的幸福感」:どの程度幸せと感じているかを聞くもの。

生活満足度」:現在の生活にどの程度満足しているかを聞くもの

認知機能の効果

「並行」、「再生」、「言語」課題が向上

認知機能は、東京都老人総合研究所などが開発した「ファイブ・コグ」を使用して効果を検証しました。ファイブ・コグは一度に多数の高齢者の認知機能を評価することができ、認知機能が上がったのか、下がったのかも示せる検査法です。その結果、実施グループでは、実施後に並行、再生、言語で明らかに向上していることがわかりました(統計学的にも有意)。並行、再生は軽度認知障害の段階で低下しやすい指標、言語はアルツハイマー病で侵されやすい指標です。

図:介入群の得点の変化

文字位置照合課題
(並行)

「上」「中」「下」の文字と文字の書かれた位置が一致するものに〇印をつけて、同時に順番に数字を振っていく並行作業課題。注意の切替えが必要な注意分割機能を測る。軽度認知障害の段階で特に低下しやすい。

手がかり再生課題
(再生)

スポーツ、花、職業など手がかりとなる8つのカテゴリーごとに4個、合計で32個の単語を記憶し、カテゴリーをヒントに書き出す。言語的エピソード記憶を測る。認知症になる前の軽度認知障害の段階では、この機能が低下するので、この課題の成績は重要な指標となる。

動物名想起課題
(言語)

2分間にできるだけ多くの動物名を書きだす。言語流暢性機能を測る。アルツハイマー病では、適切な言葉を引き出す機能が侵される。この機能も、軽度認知障害では比較的低下が少ない。