レクリエーション運動の歴史

独自に歩んできた諸活動がレクという名のもとに集結し、1つの大きな運動をなす

90年代における福祉領域のレクリエーション運動の発展は目覚しいものがあった。高齢社会の到来に備えて、高齢者介護サービス基盤の整備が進む一方で、サービスの質や高齢者1人ひとりの生活の質の向上に大きく寄与してきた。

しかし、振り返ってみれば、90年代は余暇開発、生涯スポーツ、自然型活動など、あらゆる分野でのレクリエーション活動の成熟度が増した時代であり、それらが結集した「大きなレク運動」の予兆が感じられた時代でもあった。

1990年代

1991年3月11日、朝日新聞夕刊の一面。日本レクリエーション協会が「余暇生活開発士と相談員の養成のための通信教育を始める」という記事。余暇生活を支援するという、それまでに類を見ない資格の誕生に全国から大きな反響が寄せられた。
戦後、日本の社会で余暇=レジャーが大きく前に出たのは、60年代初頭のレジャーブームが最初であった。以後、70年代は余暇開発ブーム、80年代はリゾートブームと、経済問題の枠内とはいえ、時代を追うごとに余暇の質を問う視点は深まりつつあった。

そして、日本を席巻したバブルが弾け飛んで、世の中の価値観が180度転換した90年代。金銭よりも心のゆとりを求め、余暇の自立が叫ばれるようになると、それまでやや断絶気味だった余暇とレクリエーションが融合の兆しを見せ始める。生涯学習や生涯スポーツが市民の関心を集めるような教育ニーズの変化とも相まって、活動ばかりでなく、その質を重視する、新たな余暇時代が到来したと言ってもいいだろう。新聞記事の反響の大きさはそのことを明確に示している。

ただ、戦後の日80年代後半から、リゾート開発と銘打って進められてきた過剰な投資は、ひとたびバブルが崩壊してみると、環境破壊という巨大な負債を残していることが白日の下にさらされた。その問題を解決する取り組みとして、キャンプやオリエンテーリングといった従来の野外活動とはひと味違う、自然との共生を目指すネイチャー・レクリエーションが台頭していく。レクリエーション活動を、個人の楽しみと見るだけでなく、社会的な問題の解決に向けた取り組みとして捉え直そうという発想が目立ち始めた。

スポーツの分野では、競技志向とは一線を画した生涯スポーツという考えが定着。欧米のスポーツクラブに範をとった「総合型地域スポーツクラブ」の結成が呼びかけられるなど、新たなスポーツ型レクリエーションに関心が集まった。福祉レクリエーションの分野では、介護やリハビリを土台に、地域の高齢者の介護予防など、活動の裾野が拡大。あわせて、さまざまな援助技術とプログラムが開発されていった。

支流が集まり大河をなす。90年代は、独自に成長を遂げてきた各分野の活動が、レクリエーションという共通の旗印のもとに結集し、1つの大きな「社会運動」として再組織される兆しが見え始めた時代であったのかもしれない。

監修:薗田碩哉(実践女子短期大学元教授)

参考文献

『レクリエーション運動の五十年』
(日本レクリエーション協会 発行・編)